新栄町龍山會と同じ年である九代目會長の福永 浩也。會には子供の頃から携わってきました。今の新栄町龍山會の大蛇を形作ったのは紛れもなく彼です。そして今度は、會長として新栄町龍山會そのものの形を新しく創ろうとしています。
そんな福永 浩也に今の新栄町の祭に対して感じている事や、龍山會のこれからについてムネノウチ(胸の内)を聞いてみました。
■インタビューした日:2025年6月18日
(えるる にて)
■聞き手:マチドリ(当サイトの運営者)
【會長として感じた・感じている事】
>まずは、會長になった率直な感想を。
考えることが多いですね。
今までは大蛇作製をメインでやってきたので、囃子やわ組など他の部署の會員と話す機会は少なかったんです。それが今、各部署の色んな人と色んな話をしていて、考えることが多くなったな、と。
>八代目スタートと同時に幹部へ昇格。その後の2年間で、幹部→副會長→會長と急展開で役割が変わってきたけど、戸惑いはあった?
戸惑いは全くありませんでした。僕はこれまで与えられた役割を全うするという事を続けてきたんですが、會長になってからは、その役割の範囲が広がっていったという感覚です。
>やれる範囲が広がっていった事で不安はなかった?
若い時からやりたい事は沢山あったんですが、立場的にできない事も多かったんです。それが今は全てやれるわけです。しかも自分の責任の中で。そういう意味では楽しく、やり甲斐をもってやらせてもらっています。不安はありませんね。
10年以上前から、會長になる日を想像しながら準備してきました。心身ともに疲れるときはありますが、苦労以上のリターンはあるので、僕自身も頑張れています。
>現状は想像通りの状況になっている?
結果的にですが、今は思っていた通りの状況になっています。もともとのイメージに乗ってきたという感じです。
>會長としての目線で、今の會全体の状況はどう捉えている?
簡潔に言うと「順調」です。雰囲気も良いと感じています。
ここから本番を迎えるにあたって軌道修正が必要な部分はありますし、問題がでてくる可能性もあります。ですが、現状は総じて順調だと捉えています。
特に若い會員の層が一気に厚くなったなと感じていて、僕から下の世代は年代を超えたコミュニケーションもとれていると思っています。今後は僕より上の世代との繋がりを強固にしていけたら、イメージ通り全体で「ひとつ」良いものを創れるんじゃないかなと思っています。
>「ひとつ」という言葉は、九代目になってから頻繁に聞いてきたように感じるけど、意識してきた言葉かな?
そうですね。そこはとても大事にしているところです。
會も発足から40年近く経ちました。一番上の方が75歳、一番下は(會員ではないですが)7歳で、一通りの年代が揃った時期かなと。この幅広い年齢層でちゃんとした祭ができると、會としての完成度もひとつ上がると考えています。
僕が九代目で、會には沢山の先輩方がいらっしゃいます。そのなかで自分の色を出していくのはとても難しいのですが、會が次のステージにいくためには大事だと思い、「ひとつ」という言葉(イメージ)は大切にしています。
>コミュニケーションについては、仕掛けてきた?結果的に?
両方あります。
以前は大蛇を作る場所が新栄町ではない時期もあって、僕は周囲とのコミュニケーションをとる事も少なく、ただ大蛇を作るだけで、気付いたら祭当日になっていた…なんて時期もありました。
その頃に大蛇を作りながら考えていたのが、「大蛇を作る場はコミュニケーションの場になる」という事です。男女・年齢関係なく、コミュニケーションをとれる唯一の場所なんじゃないかなと。そう考えるようになってからは積極的に會員とコミュニケーションをとって、大蛇を作る場をみんなが集まれる場にするよう仕掛けていきました。
そうこうしている間に新栄町大蛇山交流プラザができたのですが、結果的にこれは大きかったです。これで沢山の人が交流できるようになった。交流プラザのお陰で少しずつ人が寄るようになってきたんです。それが積み重なって今のように多くの人が集まれる場所になりました。
そこで単にコミュニケーションをとるだけではなく、信頼関係の構築にシフトした結果、今では常時15人ほど集まるようになりました。以前は2〜3人で大蛇を作っていたので、今の大蛇作製の光景を見て感動しています。
>大蛇山を作る場が、単なる作業の場という枠組みを超えて、會員が交流できる場というところまで、役割が拡がってきたという感じかな?
そうですね。

【運営上の信念】
>會を運営していくうえで大事にしている事はある?信念とか。
各部署、會員の皆んなでひとつのお祭りという作品を創りたい。というのはあります。
>「みんなでひとつ」が信念ということかな。
そうですね。
一部の人たちだけが突出してしまうと、他の人達が入り込めなくなる。そういう部分を馴染ませる手法を探してます。まずはコミュニケーションをとりながら、外から入りやすい環境を作っていく。「中心的存在の人間だけが楽しい」という雰囲気があまりにも強くなってしまうと、孤立する會員もでてくるだろうし。そこは慎重に見極めながら進めていきたいです。
また、これから新しい課題がでてくるだろうし、その時に皆んなと話し合って方向性を作り出していけるように、會内部の関係強化も進めておきたいですね。
>内部の関係強化を進めるうえで副會長は重要な役職だと思うけど、選んだ際の意図や想いは?今の3人は最初から頭の中にあった?
最初は清田さん、高田君の2人かな?と考えていた頃もあったのですが、祭の内容を知っていくうちに、僕が得意ではない、且つ他の二人にはできない部分がどうしても残ってしまって。その空白を埋めてくれる存在として竹下さんに入ってもらい、今の3人という形にしました。そこからは、僕を含めた4人の信頼関係を築いていくことを念頭にここまでやってきました。
今となっては、僕は彼らに助けられているなという想いが強いです。

>副會長それぞれに具体的な役割はある?
各自が受け持つ部署の役割はあります。また、それらに関する最終的な決定権も渡しています。
ある程度、構造や環境を作ってしまいバトンを渡すので、後は責任もって担当部署を引っ張っていくよう、本人たちにも伝えています。
>決定権を渡すことに不安は無かった?
全く無いです。
そのために長い時間をかけて信頼関係を築いてきました。今では、副會長の3人は僕の考えも理解してくれていると思っています。
何かトラブルが発生した時に最終的な責任を取る覚悟はできていますし、そうでなければ信頼関係は築けません。彼らとはしっかりと信頼関係ができているので、副會長に権限を渡すことに不安は全くありません。
>九代目として目指す、今後の會のビジョンは?
新栄町龍山會は新栄町商店街振興組合の下部組織です。つまり、新栄町の振興という目的が會のベースにあるわけです。祭を通じて沢山の人に新栄町にお越しいただく。それが新栄町の振興に繋がれば目的は達成され、新栄町商店街振興組合への恩返しにもなると思っています。
その意味では、僕らの祭にはエンターテイメントの要素も強くあると思っています。それによって、祭当日に新栄町に多くの観客の皆さんがお越しくださる。観客の皆さんがいるからこそ、僕らは頑張れる。だから、観客の皆さんにはとても感謝しています。そして、僕らの力で新栄町にお越しいただける人をもっと増やし、新栄町の振興につなげたい。そのためにエンターテイメントの部分を大事にしていく。そういうビジョンはありますね。
【會員に向けたメッセージ】
>九代目會長として、會員に向けてメッセージはある?
まず、ここまでに話してきた「ひとつにする」、そのための「コミュニケーション」。そして、そのコミュニケーションに関して大事にしていることがあります。それは、相手の気持ちを考えて、言葉を選んだり行動を考えたりすること。これが出来ると、コミュニケーションの質を高める事が出来ると思っています。
自分の想いを届ける時には、常に相手の想いを感じること。これを皆さんにも大事にしてもらいたい。會員皆んながそうなると、もっともっと良い會になると思っています。
【今年の祭りに向けたメッセージ】
>では最後に、今年の祭りに向けてメッセージをお願いします。見どころ、意気込みなんでもどうぞ。
とにかく皆さんに楽しんで頂ける要素を沢山盛り込んで、時には感動して頂けるような祭を全會員で「ひとつ」となって創っていきます。祭当日には、ぜひ新栄町にお越しください!よろしくお願いいたします。
<インタビューを終えて>
20歳の頃から大蛇作りの担当者に大抜擢され、その大役を全うするため、人一倍苦労してきた九代目會長。
常に大蛇作製のプレッシャーに苛まれながらも、その状況から逃げずに粘り強くやり続けてきた結果、會長にまで昇り詰めました。この貴重な経験を踏まえて、彼は若い世代に何を伝えていくのか?やがて発足40年を迎える新栄町龍山會において、何を守り、何を変えて行くのか?九代目の今後がとても楽しみです。